神龍と風の舞姫
「……うん」

そうだね

小さく頷いて温かい毛に顔をうずめながら瞳を閉じる

ぎゅっと握りしめたのは、海斗からもらった忠誠の証

深い海の色をした綺麗な宝玉

それがある限り、海斗の忠誠は活きている

そして、しるふの声は海斗に届くのだ



森の中の朝はとても気持ちがいい

朝露に濡れた木の葉は朝日を受けてきらきらと輝き、起き始めた動物たちの息遣いを感じることができる

川を流れる水も冷たくてとても心地いい

不思議と気分もさわやかになる

「しるふ」

洞窟の入り口で大きく伸びをし、青く広がる空を見あげていると奥の方から海斗が歩いてきた

「おはよう、海斗」

「…何かあったか」

挨拶をそっちのけで、海斗が問う

澄んだ青色の瞳が静かに向けられて、ああ、これはごまかせないな、とあきらめのような心境になる

九尾が言ったわけではないからしるふのいつもと違う雰囲気を察知したのだろうけど、ホントそういうところは鋭い

「ん、ちょっとね、昨日変な夢見た」

「夢?」



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