神龍と風の舞姫
「そうそう、あなた」

フードを深くかぶった商人は男か女か区別がつかない

売っているものは雑貨のようだ

壺や置物、小さなアクセサリーなどが布の上に置かれている

「かわいい御嬢さん。何かどうですか」

「んー、あいにく壺は必要としてないわ。この馬の置物も、置くとこないし」

店の前にしゃがみ込んで一つ一つ商品を見ていくけれど、これと言ってほしいものはない

「じゃあ、この首飾りはどうですか」

なんか機械的で抑揚にかける人だな

と少し気味悪さを感じながら

「うーん。首飾りもあいにく間に合ってるわ」

そっと背後の海斗を探る

そこに海斗の気配が感じるなら、この人がたとえ突然切りかかってきても問題ない

「そうですか、それは残念だ。じゃあ、お隣に居る彼はどうですか。見たところお知り合いのようだ」

標的を海斗に移し、少しだけ顔を動かす商人を探るような瞳で見つめた海斗は

「行くぞ」

短く言い放ちしるふを促す

慌てて後を追いかけるしるふと海斗の背をフードの下から覗く口元が、愉快そうに笑みを宿して見つめていた
< 79 / 117 >

この作品をシェア

pagetop