神龍と風の舞姫
「なんか気味の悪い人だったね」

早足で追いつきながら横を見る

「そう思うなら近づくなよ」

「だって、呼び止められたんだもん」

無視なんてできないよ

「そうやってるとそのうち身を滅ぼすぞ」

以前歩調が早めの海斗に必死について行きながら

「そう思うなら突然消えたりしないでよね。毎回私が寂しく市を見ることになっている原因は海斗じゃない」

静かに抗議してみる

世渡りは絶対に海斗の方がうまい

しるふはいい意味でも悪い意味でもお人よしだ

そこが危なっかしいんだとよく海斗に言われるけれど、生まれ持った性質はなかなか変えられないものだ

「食料は買わなくて良かったよな」

あ、話そらしたな

じっと睨みつけつつ

「うん、こないだたくさん買ったし、次の街でも大丈夫だよ」

と真面目に答える自分は偉い




「やっぱりさ、二人だと楽しいねー」

夕方、宿までの道を夕日を眺めながら歩き、後ろに居る海斗を振り返る

「嫌味か」

「そうじゃないよ。ただの感想。話し相手がいるって違う」

うれしそうにくるっと前歩を向くしるふに、やっぱり嫌味だろうと心の中でつぶやく

「白眉か九尾でも連れて行けばいいだろう。しるふの言うことなら聞くはずだ」

「誰もいないところに向かって、ねえ、あれかわいいね、とか阿智のお店行ってみようよ、とか言うの?」

ただの不審者じゃない

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