空から舞い降りた天使
待ち合わせの時間より早く着いてしまい、大きな窓ガラス越しに外の景色をぼんやりとみつめる。



あの人に逢うのは今日で最後。


くりかえし、くりかえし、頭の中で、呟いては、またくりかえす言葉。





「ごめん、待った?渋滞に巻き込まれたよ。」



「ううん、私も今、来たところ。」



「ミハル、今日帰るんだね。それがいいよ。」



「あなたに、伝えたいことがあって、ここまで、押し掛けちゃった。なんて、勝手よね。」



「僕たちは、もう何年も前に終わってる。」



「ううん、そういう話じゃあなくてね、」



「じゃあ、なんの…?」



「あの日の事がひっかかっているの、何年たっても。
あなたに、何も言わずに出ていって…」




「もう、いいよ。」




「あなたに、ありがとうって言いたくて…。」



胸のつっかえが、だんだんと、とれていくのが、わかる。



「ありがとう、も言わずに、飛び出して、ごめんなさい。」




「ミハル、僕こそ、君と出会えてよかったよ。
ありがとう。」




「私もよ。あなたと出会えてよかった。」




静かな空気が流れるのを、嫌がるように、ミハルが話題をかえる。



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