一期一会 ~未来からの贈り物~


校舎を出て校門まで。


大した距離はないのに、足元は暗くてよく見えない。


琉司は自転車通学なので、駐輪場に自転車を取りに行ってしまったので、ひとりっきりで校門まで歩いていく。



空にはもう小さい宝石達が一つ二つと輝きだし、闇は色濃くなる。



「…綺麗」そう呟くと、「だな」なんて声が頭の上から降り注ぐから、びっくりしてしまった。



だ、だって、琉司の声じゃあない!



じゃあ……。



恐る恐る見上げると、知らない男の子が立っていた。



「あなた…誰?」

「俺は…」



そう彼が言い掛けた時、「おーい!」なんて琉司のばかでかい声が届いた。



えっ…、



そちらに気をとられた一瞬の間に、さっきまで隣に居た彼は消えてしまった。




「えっ、あのー…」



キョロキョロ当たりを見渡していると、近づいてきた琉司がげげそうな表情で私を覗き込む。



「ミナモ、どうかしたのか?」

「うんん、別に…」



何処に消えたの?



何処にも見当たらない男の子の姿に、狐に摘まれた気分になった。



夢…じゃあないよね?


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