竜王様のお約束
その時突然響いた‘ぱんっ’という音に、コクリュウはまたも、びくっと肩を揺らす。


音の出所に目を向けると、どうやらイオリが手を叩いたようだった。


まだ胸の前で、手を合わせたままである。


赤い色のおかっぱで、日本人形を思わせるようなイオリは、普段あまり表情を変えることがない。


そんなイオリが、目を細めて微笑み、体全体で嬉しさを表しているのだ。


「コクリュウ様。」


イオリは満面の笑みを浮かべ、コクリュウの名を呼んだ。


「う・・・うん・・・?」


コクリュウは、不安げに返事をしてみる。


「さぁさぁ、話もまとまった事ですから、そんな所にお立ちになっていないで、お座り下さいませ。
コウリュウ様も、さぁ。
今、お茶をお持ちいたしますから。
お寛ぎになって下さい。」


「それもそうだ。
別に立っていなくてもいいだろう。
コクリュウ、掛けてくれ。」


コクリュウは訳が分からず、促されるままに、極上の真紅のソファーへと案内されたのだった。

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