竜王様のお約束
コクリュウの緩んだ顔を見て、コウリュウは少しだけ、その妖艶な漆黒の瞳を細める。


「お前は時々、つかみ所のない言動をするから困る。
さっきまで、シュンとしていたかと思ったら、今度はなんだ、急に嬉しそうに。」


コウリュウは、胸の前で腕を組むと、ふかふかのソファーの背もたれに、ポフっと体を預けた。


「いえ。
私は、別に。」


コウリュウに指摘され、慌てて恐縮するコクリュウに、イオリが声をかける。


「さぁ、コクリュウ様。
お茶が入りましたので、お召し上がり下さい。」


手馴れた所作で、コクリュウに振る舞われたお茶からは、びっくりするほど芳醇な薫りが、立ち上った。


コクリュウは、鼻をくすぐるその湯気を、思いっきり堪能してから、一口、口に含む。


「これは、なんと豊かな。」


思わずこぼれた称賛の言葉に、イオリの顔から、笑みがこぼれた。


「そうでございましょ?
コウリュウ様、一押しの、秘密のブレンド茶葉ですもの。」


コウリュウの前にも、カップを置きながら、優しい声で、イオリは言った。

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