竜王様のお約束
コクリュウは、目をパチクリとさせて、嬉しそうに語るイオリに、何の気なしに問いかける。


「秘密の・・・。
へぇ、それならこの美味しさも納得です。
しかし驚きました。
イオリ殿とコウリュウ様は、プライベートで秘密を共有なさるような、間柄だったのですねぇ?」


コクリュウにしてみたら、これっぽっちも悪気のない質問に、イオリはたちまち真っ赤になって、恥ずかしそうに、抗議した。


「なっ!コクリュウ様!
とんでもない誤解です。
私とコウリュウ様が・・・そんな訳、ないではないですか。
これは、茶葉に限った話です。
ハクリュウ様が、天界にお留まりあそばす、よい理由が見つかった事が嬉しくて、つい余計な事を申してしまいました。
お忘れ下さいませ。
私がコウリュウ様と、秘密を共有だなんて、天地が逆さになったとしても、あり得ませんから!!」


イオリは、プリプリと不機嫌な様子で饒舌に語り、恥ずかしさを全面に押し出して、ティーセットを乗せたワゴンの隣に、直立不動になる。


余りのイオリの勢いに面食らい、またも目をパチクリとさせるコクリュウに、イオリは向き直ろうともしなかった。

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