竜王様のお約束
『そんなにムキにならなくても・・・。』


コクリュウはイオリのそんな態度に、少々不満を持った。


しかし。


「それはそれは。」
と、素っ気なく言葉を濁すだけの大人な対応で、コクリュウはこの場をやり過ごす事にした。


イオリが抱く、コウリュウへの想いを知らないコクリュウにしてみたら、さぞや大袈裟な態度に見えた事だろう。


イオリにしても、コクリュウの今の言葉を軽く受け流せる程、まだコウリュウへの想いが、断ち切れてはいなかったのだ。


「イオリ。」


コクリュウの言葉に、過剰反応を見せたイオリに、低いトーンでコウリュウが声をかける。


「はいっ。」


『もっときちんと否定した方が、よかったのかしら。』
と、びくっと、イオリは返事をしたのだが、コウリュウの口から流れてきた言葉は意外なもので。


「やはりこのブレンド茶葉は、旨いな。」


と、いうものだった。


今の二人のやり取りを神妙な面持ちで聞いていたコウリュウは、意地の悪い笑みを浮かべ、イオリを見る。


そのコウリュウの表情は、いつになく不機嫌で、イオリは少しばかり返答に困ってしまった。

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