竜王様のお約束
「ヤヨイ様を想うハクリュウ様の固いご決心は、私などには覆すことなどできないようです。」


ハクリュウは、そのコクリュウの言葉を聞いて、チラリと視線を動かす。


「コウリュウ様に、ああ言った手前、大変心が痛いのですが、私にハクリュウ様を説得するなどとは、最初から無理な話だったのです。
身の程知らずにも、程がありました。
出すぎた事をしたばかりに、私はコウリュウ様を、失望させてしまいます。」


磨き込まれた白い床の上で正座して、コクリュウは神妙な顔をした。


コクリュウのこういう、本音でぶつかってくれる、真面目で純粋なところが、ハクリュウは嫌いではなかった。


己の失敗を保身のために他人に押し付け、やれ竜王だ王弟だを相手にする時は、顔色を伺ってびくびくし、隙あらば取り入ろうとしてくる輩の、なんと多い事か。


そんな連中を相手にするために、敢えて冷酷に振る舞うしかなかったハクリュウ。


この煩わしさの中にあって、コクリュウと会話する時は、僅かながらハクリュウも、肩の力を抜く事が出来たのだ。


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