竜王様のお約束
クックックっと、小刻みに肩を揺らしたハクリュウは、額から手を離して、穏やかにコクリュウに言った。


「謝罪は、せぬともよい。」


その言葉を聞いてコクリュウは、焦ったように片膝を立て、わずかに動いた。


「いえ、しかし!」


「まぁ、落ち着け。
その代わりそなたには、リョクに伝言を伝えるため、人間界へ行ってもらう。
父と母は、今しばらく屋敷には戻れぬ故、淋しいだろうがいい子で留守番するように、と、申し伝えよ。
それでよいな?
・・・嫌とは言わせぬが。」


そう言ってハクリュウは、長い足を組み換えた。


少し呆けた顔をして、ゆっくりと立てた片膝を引っ込め、正座に戻ったコクリュウ。


今賜った、ハクリュウの言葉を頭の中で反復すると、ハッと真顔になった。


「何という、ご慈悲。
このコクリュウ、しかとハクリュウ様の勅命、承りました。
リョク様へ、一言一句間違いなく、お伝え致して参ります。」

一気に捲し立てたコクリュウは、深々と頭を下げてから、スクっと立ち上がり、またも丁寧にお辞儀をして、ハクリュウの部屋を後にしたのだった。

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