竜王様のお約束
我の愛しい妃の生気を、皆に分け与えたくはないのだ。ヤヨイは我一人のモノぞ。例え生気であろうとも、誰にもヤヨイを触れさせたくはない。竜王である限り、生気を分け与えるという役目を負わねばならぬが、我にはもう、その責務を果たすこと叶わぬ。よって竜王の座を下りることと到す。


次期竜王を託されたコウリュウが、唖然とするのも無理もない。そんな理由で?と、思ってしまうのも・・・。


しかし長い間、孤独な竜王でいた事へのハクリュウの苦しみを加味すれば、ヤヨイといる時のこの穏やかな表情を奪うことは、コウリュウにできるはずもなく。ハクリュウが突然竜王を辞する、皆が納得する上手い理由として考えた竜王崩御の一芝居だったのだが、ここへ来て嘘だとバレてしまった。


奇しくも嘘つき竜王となってしまったコウリュウに、もう天界を統べるだけの求心力はないだろう。天界の行く末を考えれば、ハクリュウがこのまま天界に留まり、竜王に収まってくれるのが一番だ。まあ、竜王にならないまでも、せめて自分で撒いたこのわがままの結末を、自らの手で収束させてもらうまでは、何とかここに留まってもらいたい。コウリュウだってそれは必死である。もう、兄の尻拭いはごめん被りたい。


そんな両者の思惑が相まって、引っ張り出されたのが、あろうことかリョクであった。


そのリョクが今、ハクリュウとヤヨイの目の前に、コクリュウに連れられて立っている。何とも驚きを隠せない表情をして。
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