竜王様のお約束
そんな掛け合い漫才が繰り広げられている屋敷の外では、対照的に戦慄が走っていた。


村人達は、みな一様に空を見上げ、恐怖におののいている。


ヤヨイもまた、空を見上げて固まっていた。


「ヤヨ・・・ヤヨイ様・・・。
屋敷へ戻りましょう。
これは、一大事です。
ハク様に、ご報告を・・・。」


同行していたシキが、やっとやっと声を絞り出す。


いつもなら冷静沈着なシキを、目の前の光景が、そうさせていた。


「そ、そうね・・・。
それがいいわ。」


ヤヨイもかなり動揺しており、同意するのがやっとであった。


それもそのはず。


上空には、大きな黒い龍が、飛来していたのだから。


コウリュウさん、人間界へは関わらないって、宣言したはずなのに。


ヤヨイが、そんな事を思った矢先、徐に辺りに激が飛んだ。


『コウリュウ王の寵姫はどこだ?』


ひぃっ!と言う、村人達の声が響く。


黒龍は首をもたげ、辺りを見渡すと、1人の娘を目に止めた。

それは、琥珀色の瞳をした、波打つ茶色い髪の娘。


『見つけた』


黒龍は、ゆっくりと娘に手を伸ばした。
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