竜王様のお約束
そんな2人を微笑ましく見ているかと思いきや、ハクリュウは厳しい視線をコクリュウに投げていた。
ハクリュウに無言で睨まれる恐怖ときたら、かつての冷酷無比な竜王の視線そのままだ。
「父様ったら、どうしてそんなに怖いお顔をしているの?」
ハクリュウのただならぬ様子に気がついたリョクが、遠慮がちに問いかけた。
「そうか?
我の顔は、そんなにも怖いか?」
ハクリュウはリョクを見ることなく、むしろリョクの後ろに当然のように控えている、コクリュウに答えるかのように呟く。
「い・・・いえ・・・そのような・・・。
威厳に満ちた、凛々しいお姿とお見受け致します。」
ハクリュウはコクリュウから視線を外さなかったため、ついコクリュウも自分への言葉だと感じて返答してしまった。しかも思わず片膝を折り、深々とお辞儀までしている始末だ。
「ほぉ・・・。そうか。
リョク、父の顔は怖くはないそうだ。
父の顔が本当に怖くなる前に、そなたの前から場所を移したほうがよさそうだ。
コクリュウ、この経緯を聞かせてもらわねばならぬ故な、コウリュウの部屋へでも参ろうぞ。」
ビクッと背中を震わせたコクリュウは「はっ。」と、短く答えてから静かに立ち上がる。
今まで一緒にいたコクリュウが出て行ってしまう事に不安を覚えたリョクは、咄嗟にコクリュウに呼びかけた。
「コクリュウ!
行かないで、側にいて!」