竜王様のお約束

「リョク様、大丈夫でございますよ。」


愛想笑いを残して、コクリュウはハクリュウの後について、部屋から居なくなった。


「なんで?なんで父様はあんなに怒るの?
ねぇ、母様どうして?
私がここへ来たから?
コクリュウは悪くないよ。
私がここへ来たいって、連れてきてもらったんだよ。」


バタンと閉じられた扉から視線を外して、リョクはヤヨイに詰め寄る。


ヤヨイは狼狽えるリョクの髪を優しく撫で、いつもはハクリュウと座る白くふかふかのソファーに連れて行き、一緒に腰を下ろした。


「リョクごめんね。
誤解しないで・・・誰も悪くなんかないの。
父様もね、怒ってる訳じゃない。
父様は人一倍、責任感が強くて、愛情深い人だから。
愛するリョクを、天界のゴタゴタに巻き込みたくなかっただけ。」


「天界に来る道中で、コクリュウから大体のことは聞いたよ。
父様とコウ叔父様の間で、意見が対立しているって。
ゴタゴタってその事なんでしょ?
コクリュウ、2人の板挟みになって可哀想。」


ヤヨイは思う。


そもそも巫女でもない私が天界に来て、ハクリュウと愛し合ったばっかりに、こんな事になったんじゃないだろうか。やはり私なんかが竜王様の愛を独り占めするなんてのは、勿体ない話だったんだ、と。


あの時・・・ハクリュウが人間界に行こうと行った時・・・。ハクリュウの優しさに甘えて、自分の嬉しさやハクリュウと一緒にいられる幸せを優先させるんじゃなかった。
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