竜王様のお約束
でも・・・。
ハクリュウがあまりにも穏やかで、これで竜王の重圧から解放されるんだっていう安堵が伝わってきて。私は敢えて言葉を飲んだんだわ。そうよ。私は、私を愛してくれる人のために、決断したんだった。今更迷いを口にしたら、ダメじゃない。
「リョク。
父様の所に行こうか。
たぶん私がいないと、もっと話がこじれてしまうと思うの。
コクリュウさんも、可哀想だしね。」
「行ってもいいの?」
ぱぁっとリョクの表情が明るくなり、白いソファーが少し跳ねた。
「コクリュウにも会える?」
「勿論よ。
コクリュウさんに、会いたい?」
うんうんと、大きく頷くリョクの潤んだ瞳に『恋』の二文字が見えた気がして、ヤヨイは暖かな笑を浮かべた。
「コクリュウさん、今頃きっと困ってるわ。
リョクが味方になってあげてね。
母様もちょっとだけ、頑張ってみようかな。
父様のために。
コウリュウさんには、イオリさんがいるから・・・。
うん。皆で考えればいい案が浮かぶわ。
さぁ、行きましょう。」
「うん!行く〜!」
勢いよくソファーから立ち上がると、リョクはヤヨイの手を握り立つように促した。まだ幼さの残る娘は緑色の長い髪を揺らし、未だ若々しいままの母に満面の笑みを向ける。
そんな愛らしいリョクに、ヤヨイは改めてしっかりしなきゃと、心を決めるのだった。