竜王様のお約束
ウソ!


ウソウソ!!


ウソウソウソ!!!


ゆっくりと自分に向かって伸びてくる、黒く大きな龍の手に、ヤヨイは後退りながら、心の中で繰り返す。


そしてその手で、ムンズと胴体を鷲掴みにされたヤヨイは、出来る限りの大声で、黒龍に聞こえるように叫んだ。


「私、違います!
コウリュウさんの寵姫なんかじゃ、ありませ~ん!」


ヤヨイの身を護るため、同行していたはずのシキは、余りの恐怖に、身動きすら出来ずにいる。


生まれて初めて、それもこんなに間近に龍を見たのだ。


シキを責める事など、出来はしない。


「放して!放して!」


渾身の力を込めて、バシバシと黒龍の大きな手をグーで殴り、必死に抵抗するヤヨイ。


しかし、そんなささやかな抵抗は、黒龍にとって虫に刺される処か、絹の衣で撫でられた位の効き目しかない。


「助けて!ハクリュウ!」


体がフワリと浮き上がり、最早成す術を失ったヤヨイは、力の限り叫ぶ。


「ハクリュウ~!!」


ヤヨイは、連れて行かれてしまった。


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