竜王様のお約束
「私の気持ちを聞いてもらったからって、何かが解決するわけではないけれど、皆の意見を少しづつす摺り合わせることで、何かいい案が浮かぶとは思うの。」


そう言って、ちょっと自信なさげにヤヨイが俯くと、見るに見かねたハクリュウが、切ない表情でヤヨイの方へと歩いてきた。自分の胸までしかない、小さなヤヨイをふわりと包み込み髪を撫でる。


「ヤヨイにそう思わせてしまうことだけが、俺は怖かった。
何度も言うけど、人間界へは俺が行きたかったんだよ。
竜王でいることの重圧から、解放されたかったから。
俺以外の竜王なら、もっと違うやり方で天界を治められるはずだ。」


「ハクリュウの気持ちは、よく分かってるつもりよ。
これが、私たちの気持よね。
・・・コウリュウさんは?」


すっぽりと包み込まれたハクリュウの腕の中から、ひょこっと顔を覗かせてヤヨイはコウリュウを見た。そんなヤヨイに苦笑しながら、コウリュウは静かに答える。


「・・・改めて聞かずとも、お分かりのはずでしょう?」


その、なんともやるせない言葉に、ヤヨイは眉をひそめて切ない顔をした。
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