竜王様のお約束
「コウリュウ王陛下の立場を台無しにしてしまって・・・。
せっかくコウリュウさんが決断してくれた事だったのに、本当に何て言ったらいいか・・・。
申し訳ない気持ちで一杯です。」


ヤヨイは伏し目がちにそう言って、ちらりとイオリに視線を送った。イオリはというと、直立不動で立ったまま、じっと下を向き微動だにしない。


イオリには、大切なコウリュウ様に不名誉を着せてしまったのは、他ならぬ自分なのではないだろうか・・・という気持ちがあった。


てっとり早く竜王を交代する手段として用いた方法が、こんな形で返ってこようとは。確かにあの時、一番気がかりな事ではあった。この嘘が万が一バレてしまったら、コウリュウ様はどうなってしまうのかと。余りの心配から、念押しをするように『コウリュウ様の今後にも関わって参りますから・・・。』と、家臣の分際でありながら、ハクリュウ竜王陛下にまで意見してしまったほどだ。


イオリがそんな事を思っていようとは露知らず、イオリさんもやっぱり怒っているんだろうな、と、勝手な想像をしてヤヨイは更にシュンとしてしまった。イオリのコウリュウを想う気持ちを知っているだけに、ヤヨイがそう思うのも仕方がない。


『ダメダメ、弱気になっちゃ。
皆が納得できる方法は、きっとあるはずよ。』


ヤヨイは自分を奮い立たせるかのように、上を向いた。
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