竜王様のお約束
口に出して聞いたことはないが、見ていれば分かる。周りを優先して自分を後回しにしてしまう、根っからの気質が。


イオリはそういう女だ。


あまり他人に気を許すことのなかったイオリが、唯一好意を持った同性はヤヨイであった。ヤヨイもまた、その生い立ちから常に自分は二番手という、一歩引いてしまうような性格だ。朗らかで前向きな中にも、そういう奥ゆかしい面を持ち合わせたヤヨイには、きっとイオリも心を開けたのだろう。でもそんなヤヨイにさえイオリは、コウリュウへの自分の想いには口を閉ざしていたという。


「イオリはそれでいいのか?」


コウリュウは、試すような言い方をした。


他に女性など、いるはずもないのに。


「いいもなにも。
コウリュウ様がお決めになったことならば、私は従うまでです。
大丈夫、ご心配には及びません。
きちんと小間使いとしての役目は、果たしますから。」


「そうじゃない。
俺が聞きたいのは、お前の気持ちだ。
さっき、そんなの見たくないって言ったじゃないか。
なのに、いいのか?
そんな風にまた・・・。
俺のためとでも思ってるんだろう?」


「あ・・・コウリュウ様のお気持ちを乱すような事を言って、申し訳ありません。
私はコウリュウ様のお側にいられるだけで、幸せでございます。
つい、感情のままに言葉を発してしまいました。
お許し下さい。」
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