竜王様のお約束
コウリュウはイオリの後ろめたさを追い払うかのように、笑顔を見せた。


「コハクは・・・もう居ない。
いつまでもコハクの影を追ってはいられないんだ。
兄上とヤヨイを見ていて思ったよ。
俺も、愛する人と幸せに過ごしたいって。
きっとコハクも、そう願ってる。
イオリとなら、きっと祝福してくれる。」


「コウ・・・リュウ・・・さ・・・ま・・・。」


堪えていた涙が、イオリの頬を流れ落ちていく。


こんな幸せがあっていいのだろうか。お側にいられるだけでいい。あの時、そう感謝した。自分の気持ちを知って尚、小間使いとして側にいることを許してくれたコウリュウに。


接する態度も変えることなく、自分の入れたお茶を美味しそうに飲んでくれたコウリュウ。それだけで満足だったはずなのに。主に恋心を抱いた自分を責めていたはずだったのに。


でも・・・。もしも願いが叶うなら。


「私なんかで、いいのでしょうか・・・。」


「長い間、よく仕えてくれた。
ありがとう。
いつの間にかイオリを愛してた。」


ぎゅっと抱きしめられたぬくもりに、イオリは声を押し殺すこともできず、恥ずかしさを感じながらも涙を止めることができなかった。




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