竜王様のお約束
いうことを聞かない緑龍に少しだけ苛立って、白龍は静かに吠えた。そんな威嚇に屈することなく、緑龍は白龍を睨み返すようにじっと見つめる。そして自分の決意を白龍にぶつけた。


『私、天界に居たい。』


リョクから送られてきた思念に、ハクリュウがどれほど驚いたかは言うまでもない。可愛い愛娘から送られてきたこのメッセージは、ハクリュウが一番避けて通ってきたことなのだから。咄嗟にハクリュウが感情的に吠えてしまうのも、無理らしからぬことであった。


『ダメだダメだ!
それだけは絶対に許さん!』


『なんで?
私、竜王になろうと思ってたのに。』


『りゅ・・・竜王になる???』


どこをどう間違ったらそんな考えにたどり着くのだろうかと、ハクリュウは皆目見当もつかない。呆気にとられしばらく押し黙っている父を見て、リョクは不安そうに恐る恐る思念を飛ばした。


『ダメなの?』


『ダメに決まっているだろう!!!』


リョクに一喝してから、ハクリュウが怒りの矛先を向けたのは、緑龍に庇われ傷ついた体でふらふらと宙に漂う黒龍であった。


『コクリュウ!
そなた一体リョクに何を吹き込んだのだ!』


『も・・・申し訳ございません。
何とお詫びしてよいやら・・・。』
< 207 / 257 >

この作品をシェア

pagetop