竜王様のお約束
『ヤヨイの元へ。』


その鬼気迫る気持ちが、僅かに残っていたハクリュウの、龍の本能に火をつけた。


ハクリュウ自身も不思議に思うほど、すんなりと能力が復活した事に、驚いている程である。


この手狭な体の中から、解き放たれる感覚は、とても懐かしいく、えもいわれぬ解放感がハクリュウを包み込んだ。


久々に本来の姿に戻り、悠々と大空を飛翔したハクリュウは、知ってか知らずか、今まで封印してきた“冷酷さ”までをも取り戻してしまっていた。


『ふんっ・・・。
我からヤヨイを連れ去るとは、いい度胸だ。
コクリュウめ、どんな制裁を加えてやろうぞ。
そうだ先ずは、ヤヨイに触れたその手を、もぎ取ってやらねばならぬな。』


ただ、ハクリュウには少しだけ、疑問があった。


コクリュウの穏やかで真面目な性格と、あの律儀な忠誠心を思うと、人間界へ姿を現すなど、とても信じられないのだ。


しかも、シキは言っていた。

「黒龍は“コウリュウ王の寵姫はどこだ?”と激を飛ばしました。」

・・・と。

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