竜王様のお約束
そんな姿を見て嫌な予感を覚えたリョクは、コクリュウが迷いを口にする前に慌てて口を挟む。


「コクリュウ。
ずっと私のそばにいてよ。
竜王には私がなるから!」


「黙れリョク。
周りの状況を見れずして竜王になどなれようか。
小娘の浅知恵でなれる程、竜王は甘くないのだ!
軽口をたたくのも大概にせよ!」


間髪いれずにハクリュウはリョクをたしなめた。かつて竜王を名乗りその大変さを熟知しているからこその、愛のある言葉である。


威厳ある父の喝にビクッと肩を揺らしたリョクの背中を、隣にいたヤヨイがそっとさすった。ハクリュウの今の言葉が間違っていないことをヤヨイも、他の三人も、重々承知していたのだ。


そんなハクリュウの一喝を受け入れるようにと促すヤヨイの手のぬくもりが、リョクにも伝わってくる。


「よいか、これはコクリュウが竜王となることが大前提の話しぞ。
それ以外は断じて認めぬ。
そしてその新竜王が我が娘を妻にと心から望むのであれば、その時は真剣に考えねばなるまい。
当の本人が妃になることを切に望んでいるのだからな。
全く腹立たしい・・・こんな交換条件のような話があってよいのか・・・。
我が娘を・・・こんな・・・なんで・・・。
やはり竜王にはコウリュウが・・・」


「兄上、しつこいですよ。」


チラッとこちらを見た兄にちょっぴり切ない顔をしては見せたが、コウリュウはハクリュウの味方にはならなかった。
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