竜王様のお約束

「あと･･･。」


少しだけ眉を潜めてハクリュウは言葉を切ると、申し訳なさそうにヤヨイに言う。


「人間界に行ったところで、きっとこの先人間界の者たちと同じようには時を過ごせないだろう。
俺達の周りには天界の時間が流れてるから。
ゴメンな。」


「ううん･･･私もそう思うよ。
それに言ったでしょ？
私はハクリュウと一緒ならどこでもいいんだってば。」


神妙な表情で、ヤヨイは静かに微笑んだ。
それを見て、照れくさそうに下を向いたハクリュウは白々しく話題を変える。


「まぁ･･･でも･･･あれだな。
よくよく考えれば、コクリュウの方こそいい迷惑だったのかもな。
俺たちの娘のわがままで、自分の意思とは関係なく妃を迎える事になっちゃってさ。」


ハクリュウは徐にヤヨイの髪を一房手に取ると、クルクルと弄び始めた。


「ふふっ。
父親が筋金入りのわがままなんだもの。
悪いところが似ちゃったんだね。」


「･･･。
返す言葉が見つからない。」


「ごめんなさい、冗談よ。
でもリョクは素敵な娘に成長したわ。
コクリュウさんだって、すぐにリョクの魅力に気づくわよ。」


「はっ･･･それもそうだな。」


そう言って笑うと、ハクリュウは今自分たちが座っている場所を本来の使い方に戻すため、ヤヨイの肩をそっと抱くのであった。