竜王様のお約束
そんな事になっていようとは露知らず、細くねっとりとした視線で、絡みつくように、琥珀色の瞳と、向かい合っている人物が居た。


“そんな事”とはハクリュウの行動の事である。


いや、正確には、ハクリュウの存在そのもの・・・の事かもしれない。


天界では、周知の事実となっている、ハクリュウ王の死。


盛大な葬儀の儀式も執り行われ、天界の時間で数週間経った今も、ハクリュウ王を崇拝していた者は、悲しみにくれていた。


まさか、そのハクリュウ王が、あの偉大な白龍の姿で現れようとは、ユメユメ思うはずがない。


その急逝の理由について、民達は、詳しく教えられてはいなかったが、公式にコウリュウが発表した言葉は

『我が兄である竜王陛下は、急に体調を崩され、懸命の手当ての甲斐なく、残念ながら崩御あそばした。』

と、いうものであった。


コウリュウにとっては、苦肉の策の嘘であるが、天界に想像以上の衝撃が走ったのは、言うまでもない。


いろいろな立場の者が、いろいろな思惑を抱き、いろいろな感情が渦巻いた。


その中の一人が、今、ヤヨイの目の前に座っているキリュウである。


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