竜王様のお約束
ヤヨイは堪らず顔を背ける。


「アハ・・・。」


キリュウは薄く笑うと、ヤヨイの顎に手を添えて、自分の方を向かせた。


そして。


「コ・・・ハ・・・ク・・・。」


そう呼ばれ、ヤヨイはゾクッと背中が凍てついた。


チロッといやらしく、舌舐めずりをして、ヤヨイの瞳を見つめるキリュウの手を、ヤヨイは勢いよく払いのける。


「私、コハクさんじゃないから!」


大袈裟に、ヤヨイに払われた手を擦りながら、キリュウはニヤッと唇を歪めた。


「そうだね。
ヤヨイはコハクじゃない。
でも、琥珀色の瞳を持ってる。
コウリュウ王も、この瞳を欲しかったはずだよ。」


「・・・!?・・・も?」


確かにコウリュウのその想いに、ヤヨイは心当たりがある。


しかし“も”という事は。


徐に、ヤヨイの耳元に顔を寄せ、キリュウは一際目を細めた。


「僕も、欲しかった。」


吐息と共に吐き出された、キリュウのその囁き声と、未だ絡みつく視線が、ヤヨイを硬直させる。


蛇に睨まれた蛙。


正に今、ヤヨイは、そんな状態であった。


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