竜王様のお約束
「ヤヨイを返せ。
コクリュウめが、ヤヨイを連れ去った。」


地を這うような、低い重低音が、コウリュウの耳に響いた。


「・・・・・!?」


まさかの事態にコウリュウは、咄嗟に言葉も出ない。


「ヤヨイは何処に居る?
コクリュウめは、何処に居るのだ?
我からヤヨイを奪おうだなど、身の程知らずも甚だしいわ!」


勢いよくコウリュウを突き飛ばし、仁王立ちするハクリュウ。

「兄上。
それは本当ですか?」


「死んだ事になっている我が、ノコノコと天界まで、やって来たのだぞ。
嘘だと思うか?」


「・・・何のために?
コクリュウの意図が、分かりません。」


呆けたように、呟くコウリュウ。


「詮索は後でよい。
先ずはコクリュウを呼べ。
同時に、ヤヨイの居所を捜索させよ。」


「はい。承知致しました。
・・・イオリ!」


ハクリュウの指示を受けて、扉の側に控えていたイオリに、コウリュウは声をかけた。


全て理解したという顔で、軽く頷いてから、深く一礼してコウリュウの部屋を後にするイオリ。


優秀な小間使いであるイオリの事である、直にコクリュウを確保して来るだろう。


しかし、その時間を待つ事さえもどかしく、出来る事なら自分の手で捜し出したい、ハクリュウなのであった。

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