竜王様のお約束
これはまずいと、コウリュウは、慌てて兄を引き止めにかかった。


本能の赴くままにハクリュウが行動したら、どんな結果が待っているか、まるっと予想できる。


しかも溺愛している愛しい妃のためとあらば・・・。
天界はハクリュウの手によって、住人もろとも消えて無くなってしまい兼ねない。


風を巻き上げ、業火で焼き尽くし、雨を凍てつかせ、落雷で割砕く。
重力を操り、押し潰すかもしれない。


ヤヨイを見つけるために、きっと兄は手段を選ばない。


過去のハクリュウ王陛下の冷酷ぶりを、嫌という程見てきたコウリュウは、そう直感した。


引き止められたハクリュウは、コウリュウに思い切り八つ当たりをする。


「今ここで、まごついている間にも、ヤヨイの身は危険の中にあるのだ。
それを思ったら・・・もう・・・ジッとしてなど居られぬわ。
ここへ来るまでに、我の姿はもう、晒されておる。
よくよく考えたら、我が外に出るに何の問題もなかろう!
そもそもコウリュウ!
そなたの不始末でもあるのだぞ!
だいたいお前は、ヤヨイの事が心配・・・」


「はいはいはい・・・。」


少し被り気味に、コウリュウは兄の言葉を遮った。
< 38 / 257 >

この作品をシェア

pagetop