竜王様のお約束
その瞬間、屋敷が軋んだ。

屋敷に巻きついた白龍が、その巨大な肢体に力を込めたのだ。


木が歪む音がしてどうやら屋敷が、ミシミシと締め付けられているようであった。


低い低い重低音が、止めろと制すように吠えると、屋敷の軋みは止まり、窓から見えていた白い鱗が、急速に小さくなっていった。


「キリュウ様。
お早くその手を、お放しなさいませ。
殺されたくは、ないでしょう。」


「うるさい。下等なメス龍め。
僕に命令するな。」


「うるさいのは、そなたの方だキリュウ。
ヤヨイから、その汚い手を放せ。」


体から未だ白い光を発したままで姿を現したのは、誰あろう、溺愛する愛しい寵姫を追って、天界までやって来た、冷酷無比な先代竜王陛下、ハクリュウ王、その人である。


地を這うようなハクリュウの重低音は、キリュウを言葉だけで威圧して、ヤヨイから手を放させてしまうほどの迫力があった。
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