竜王様のお約束
数秒遅れて部屋に入って来たコウリュウは、兄のその姿に、またも声をかけて制した。


「兄上。冷静になって下さい。
先ほどもそうですが、屋敷ごと潰したら、ヤヨイ様まで死んでしまうではないですか。」


「・・・う・・・。済まぬ・・・。」


「さぁ、ヤヨイ様。兄上の元へ・・・。」


呆然としているキリュウには目もくれず、コウリュウはヤヨイに声をかける。


「ハクリュウ・・・!」


ヤヨイはコウリュウの呼びかけで我に戻り、タッと駆けだして、ハクリュウの胸に飛び込んだ。


「ヤヨイ。
無事であったか?
遅くなって済まぬ。」


ヤヨイを取り戻したハクリュウに、怖れるものなど、もう何もない。


ヤヨイが居なくなる事だけが、ハクリュウの弱みであり、泣き所なのだから。
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