竜王様のお約束
ハクリュウは、ヤヨイから静かに離れた。


「ハクリュウ・・・?」


窓際に佇む白い豪奢な椅子が、久々に主の重みを受けて、嬉しそうにキシっという音を上げた。


「手を汚す役目を負うのは、俺だけでいい。
誰かを裁くというのは、とんでもなく・・・想像以上に負担なんだ。
コウリュウには、皆に慕われる竜王でいてほしい。
やっぱり・・・俺がやり残した事を、押し付ける訳にはいかないよ。」


ふぅっと、ハクリュウは小さく息を吐いて、言葉を切った。


顔を上げると心配そうにしているヤヨイが目に入り、ハクリュウは優しい笑顔で両手を広げる。


「おいで。」


その言葉を聞いて、ヤヨイは穏やかな表情に戻り、ゆっくりとハクリュウに歩み寄る。


こんな独断の裁きをした後は、皆決まって、腫れものに触れるかのように、ハクリュウを扱った。


かつて竜王を心配して、側に寄り添い温かい言葉をかけてくれる者など、居はしなかったのだ。
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