竜王様のお約束
静かに窓の外を眺めているハクリュウの横顔は、なんと慈愛に満ちた優しい表情であろうか。


見慣れないハクリュウの穏和な顔に、コクリュウは息を飲んだ。


「それが人間界へ行く、理由でございますか?
天界の民よりも、ヤヨイ様を選んだ・・・と、思ってよろしいのですね?」


ハクリュウはゆっくりと振り向くと、その整った顔に、薄い笑みを浮かべる。


「竜王の代わりなど、いくらでもたてられよう。
だが、ヤヨイと共にある者は、我しかおらぬ。
と、言うよりも、我以外の男が、ヤヨイと共にあってはならぬのだ。
分かるな?」


「は・・・はい・・・。」


コクリュウはハクリュウの問いかけに頷いてはみたものの、それは単に、穏やかに語る目の前の竜王を、失望させたくない一心からであった。


「それに人間界では、我等の可愛い娘が留守番を致しておる。
早く戻らねばならぬのだ。
な・・・?」


そう言ってハクリュウは、なんとも表現できない優しい瞳で、隣に佇むヤヨイを見上げた。

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