蜃気楼に恋をした


 自分が居ない所でトントン拍子に話が進み、何も知らされないまま何かの準備が整えられていくのを、まるで他人事のように見守った。
 とりあえず俺の容体が思っていた以上に悪い事と、一刻も早く治療しないと危険なんだろうなぁという事だけは、みんなの表情と周りの慌ただしさで伝わったけれど、その事実を医者本人から直接聞いた訳では無いから、まだこの時は自分の身に起こっている出来事がいかに重大なのか…これは自分の事なんだという実感が湧かなかった。



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