H.+ (エイチプラス)
呼吸は少しずつ落ち着いてきたが、心臓はまだドクンドクンと波打つように動く。

夢の中の映像が何度も何度も頭を過ぎり、私に落ち着く時間を与えない。


「泉、悪かった・・・。無理に思い出させようとしなくたってよかったのにな・・・」


裕也はギューッと強く手を握り、消えそうな声で何度も私に謝ってくる。


「・・・無理しなくていいから・・・。だから、泉まで消えないでくれよ・・・」


私の前から突然姿を消した、七海。

七海が消えたんじゃなくて、私があの日の七海の記憶を消していたんだ・・・。


「・・・もう、大丈夫。・・・私、思い出したんだ・・・」


涙は流し過ぎて、枯れたかと思った。

でも、流しても流しても・・・熱い涙は流れ続ける。
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