恋の扉をこじあけろ
「わかりません。痛みはないそうですし…」
最初に診ていた若い先生が、呼んできた中年の先生にそう報告する。
どうやらまだ新米先生だったようだ。
だけど、わからないって。
顎関節症とかいうやつではないの?
ほら、最近若い女性に多いらしいし、わたし若い女性だし。
…口、開かないし。
中年の先生もわたしのアゴの調子をいろいろ確かめると、彼なりの見当を説明しだした。
「アゴが開かないということでしたね。理由はいろいろ考えられますが、アゴの関節がうまく滑らず、止まってしまっているのかもしれません」
こんな風にね、と言いながら、先生は両手を使ってわたしのアゴの状態を表現してみせた。
ふむ、なるほど。
だからわたしのアゴは開かないのね。
「と言ってもまだ原因がはっきりしませんから、私共と一緒に探っていきましょうね」
あれ、違うの?
わたしが目をぱちぱちさせていると、中年の先生はのんびりと笑った。
「担当医が決まりましたら連絡しますから、そのときに予約を取ってください」