恋の扉をこじあけろ
今、わたしが生きている上で一番楽しみにしていることは食べること。
空腹で苦しいお腹が満たされて満足できるし、舌でおいしいものを楽しめるし、幸せなひととき。
だから、一日で一番楽しみにしていることも食事の時間である。
それなのに、最近は少し憂欝な時間に様変わりしてしまった。
何を思ったか学食でうっかりチキン南蛮丼を注文してしまったわたしは、開かない口でチキン南蛮と格闘するはめになってしまった。
「全くもう。いい加減学習しなさいよ」
冬実がまた笑いを堪えながらナポリタンをフォークに巻きつけている。
わたしはチキンをそのまま口に押し込むのをあきらめて、まずはご飯の上で細かく割くことにした。
「だって、…食べたかったんだもん」
「ああ、本当かわいそう。こんなに食べるのが大好きな子が、こんなことになるなんて!」
言いながらも、冬実は顔がにやけているから本当にかわいそうなんて思っていないんだろう。
「これは神様の思し召しじゃないの?少しは食べるの控えなさいって」
「もう。別にわたしそんなに食べているわけじゃないでしょう」