恋の扉をこじあけろ
下顎のスプリントは、上顎のものより小さくて、薄かった。
指先でスプリントを摘まんでそれを眺め、不安になる。
今度こそ噛み砕きそう。
「嵌めてみてください」
眺めまわしていると先生がスプリントをとり、わたしに口を開かせた。
シンデレラの硝子の靴さながら、先生がわたしに嵌めてくれる。
カチッ
ぴったり。
「動かしてみて」
先生に言われた通り動かすと、先生がわたしの髪をそっと耳にかけた。
顎の動きを見るためだっていうのはわかっているけど、柔らかな動きにドキドキしてしまう。
「うん、合ってるみたいだね。痛くない?」
喋れないわたしはコクリと頷いた。
上顎につけていたときより、存在感がなくていいかも。
なんか、顎も楽な気がするし。