恋の扉をこじあけろ
診察室を出たわたしは、そのまま真っ直ぐ帰…らずに、歯科がある階の廊下のベンチに座って待ち伏せした。
誰を?
《松居先生》をよ。
絶対逃がすものかと食い入るように歯科のほうを見ていると、トントン、と誰かがわたしの視線とは逆の肩を叩いた。
へ?
振り返ると、ニヤニヤしている松居先生がいた。
「何してんの?」
あ、あれ?
「なんで!?」
なんで逆のほうから現れるの!?
わたしちゃんと見張ってたのに!
「あのあとすぐに外出の用事があったんだよ」
わたしの頭の中なんてお見通しかのように、松居先生は説明してくれた。
なるほど。
わたしよりさきに出ていたわけか。