恋の扉をこじあけろ

診察室を出たわたしは、そのまま真っ直ぐ帰…らずに、歯科がある階の廊下のベンチに座って待ち伏せした。


誰を?


《松居先生》をよ。



絶対逃がすものかと食い入るように歯科のほうを見ていると、トントン、と誰かがわたしの視線とは逆の肩を叩いた。


へ?


振り返ると、ニヤニヤしている松居先生がいた。


「何してんの?」


あ、あれ?


「なんで!?」


なんで逆のほうから現れるの!?


わたしちゃんと見張ってたのに!


「あのあとすぐに外出の用事があったんだよ」


わたしの頭の中なんてお見通しかのように、松居先生は説明してくれた。

なるほど。


わたしよりさきに出ていたわけか。

< 129 / 278 >

この作品をシェア

pagetop