恋の扉をこじあけろ
確かに食べるのは大好きだけど、量はそんなに多くない、はずである。
ご飯のおかわりは控えているし、体型だっておデブにならないように気をつけている。
食べることを楽しむわたしにとって暴飲暴食なんてあるまじきことだし。
それなのに、なぜ?
いじけながらご飯粒を口に運ぶと、冬実はさっきより少し優しい声を出した。
「それでどうだったの?はじめての大学病院は?」
「うう、それがさあ。思ってたよりちゃんとしてくれなかった」
わたしが病院での出来事を話すと、冬実はふーん、と言いながらナポリタンの最後のひとくちをぱくりと食べた。
おい、なんでいつもより大口開けてるんだ。
見せつけているのか!
そうなのね!?
「もう嫌だ!ただでさえ満足に食べられなくてストレスなのに、治るかどうかもあやしみながら病院に通う生活なんて。超!面倒くさい!」
「まあまあ、そんなにめんどくさがりなさんな」
冬実は水をくいっと飲み干して、豪快に口元を拭った。
「そんなめんどくさいことを楽しむ方法、教えてあげようか?」
にやっと笑う冬実に怪訝な顔を向けながら、細かくなったチキン南蛮を口に運んだ。
「恋するのよ。そしたら、そこに行くのが楽しくなるから」
口に入れたばかりのチキン南蛮を吹き出しそうになった。
何を言ってるんだろうこの人は。
「恋?わたしが?無理だよ!」
「なんで無理なのよぅ」