恋の扉をこじあけろ


携帯の着信が鳴った。

ぼんやりしていたわたしは自分の携帯が鳴っているとは気づかずに、まわりの視線を感じてやっと気づいた。


顔を赤くしながら急いで着信画面をみると、番号だけ表示されていて、どうやら未登録の相手のようだ。


不審に思いながら出た。

不審に思っていますよ全開の声で。


なのに、聞こえてきたのはちょっと低めの、柔らかい声。


「大学病院口腔外科です。牧原さんでしょうか?」


うっかり声に聞き惚れてしまっていたわたしは、ちょっとの間を開けてそうです、と返事をした。


大学病院か。

そういうば担当医が決まり次第電話をするって言っていたっけ。


もしかして決まったんだろうか。


「次回から牧原さんの担当になりました的井です。よろしくお願いします」


「あ、はい。お願いします」


わたしの心を読んだかのように、電話の相手は丁寧に挨拶をしてくれた。


「次回の予約なんですが、今週は予約が埋まっていますから来週でも構いませんか?」


「わたしはいつでも大丈夫です」


「それじゃあ、来週の木曜日の14時はどうですか?」


「はい、大丈夫です」
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