恋の扉をこじあけろ
木曜日の講義は午前中だけだったから、お昼を食べてから病院に向かうことにした。
がやがや騒がしい学食内で、先に席についていた冬実の前にトレーを置きながら、椅子を引いた。
今日はランチBセットをチョイスした。
メインは柔らかいハンバーグで、デザートはヨーグルトだから、わたしのアゴにも負担はかからない。
わたしだって学習するのよ!
「わたし、期待してみることにした」
座るなり冬実にそう告げると、冬実はカフェランチのサンドイッチに食らいついたまま、きょとんと固まった。
「期待って、何を?」
「この前冬実が言ってたでしょ、恋してみたら楽しくなるって。病院にいくのが面倒じゃなくなるって」
冬実は思い出したのか、金縛りが解けたように頷いた。
「ああ、あれね」
「この前先生から電話があったんだけどね、わりと声が素敵だったの!」
「声がね」
「今好きな人もいなくてつまんないし、楽しんでみるから!」
「そうね、頑張ってね!」
冬実は頑張れ!と小さくガッツポーズを作ったが、そんな彼女に眉を顰めた。