恋の扉をこじあけろ
焦っている間に、先生はわたしにエプロンをつけてくれる。
今日はうっかり反応してしまわないように気をつけていたけど、くすぐったいし絶妙な触れ具合だしで、また肩を揺らしてしまった。
「ごめん、くすぐったかった?」
先生に言われてぎくりとした。
「ちょ、ちょっとだけ」
反応しといてそんなことはないとも言えず、正直に言うと、先生は笑ったような気がする。
今はマスクしているから、表情がうまくつかめないけど。
ひととおりいつもの診察を終えると、先生はわたしにメモを渡してきた。
「家の場所。迷わないようにね」
近くの人たちに聞こえないように耳元で小声で囁かれて、わたしはこくりと頷いたまま顔があげられなくなった。