恋の扉をこじあけろ
「どうしたの、その鼻」
会って早々、冬実はわたしの鼻に注目した。
「こけた」
エスカレーターでこけて鼻を強打したわたしは、鼻血こそでなかったものの、腕白坊主のように鼻の頭に絆創膏をはるはめになってしまった。
「琴乃は最近、なんだかぼんやりしているみたいだねぇ」
冬実はにやにやしながら、買ってきた小ぶりなクリスマスケーキを冷蔵庫に仕舞った。
理由はわかっているくせに。
わざとそんなことを言うんだから。
仕事が終わってから合流する川崎さんと先生が来る前に、先生の部屋にあがりこんでプチパーティーの準備をする。
場所を提供してもらっているんだからこれくらいしないとね。