恋の扉をこじあけろ


「ちょっと、何なの?冬実冷たくない?」


冬実は麦茶入りの紙コップを手に、わざとらしくわたしから目を逸らした。


「別に。琴乃が楽しそうだからって妬んでないしぃ。その先生がかっこよくなければいいのになんてこれっぽっちも思ってないしぃ」


「思ってるんじゃない!」


彼女はいたずらっぽく舌をちろりと出して、それから白くて細い腕を捲って腕時計をわたしに見せた。


その華奢な腕時計が示している時間を確認して、病院に向かう時間が迫っていることに気づいたわたしは慌ててBランチに手をつけた。


「まあ、楽しみなよ。だってわたしたちまだ若いんだから、恋しなきゃだめだよ。たとえ嘘でも、恋は女を輝かせるんだから」


ハンバーグをひとくち口に入れたわたしに、冬実が微笑んだ。



わたしと違って恋多き彼女は、いつもイキイキしていて綺麗。


彼女の口からでた輝く、という言葉にわたしは久しぶりに胸を高鳴らせた。

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