恋の扉をこじあけろ
電子版が、無機質な音声でわたしの番号を呼んで、心臓が飛び出しそうなくらい大きく鳴った。
診察表を胸に抱えてゆっくりと診察室へ向かった。
的井先生が診察室の前に立っているのが見えて、息が止まりそうになった。
どういう顔をしたらいいかわからなくて、脱いだコートが邪魔で荷物がうまく持てないふりをして、下を向いていた。
「こんにちは、牧原さん」
的井先生の声がいつも通り降ってきた。
軽やかに雪のように。
わたしの心にじわりと溶けた。
「こんにちは…」
先生の声を聞いた途端、わたしは顔がほんのり熱くなるのを感じながらぼそぼそと挨拶をした。
予定では、こんな風に挨拶するつもりじゃなかったのに。
わたしがわたしをコントロールできない。