恋の扉をこじあけろ
診察表を胸に抱えて、胸を高鳴らせながら第二診察室へと続く廊下を歩いていくと、診察室の前に白衣姿の男性が立っているのが見えた。
まさか?
まさか!?
男性はわたしにゆっくり会釈をして、手を差し出してきた。
な、何?
「牧原さんですね。診察表をお預かりします」
あっ、ああ。
診察表ね。
なんだ。
素直に診察表を先生に渡すと、診察台に案内された。
診察台に座りながらちらりと首から下げられた名札を確認すると、写真の隣に『的井祐助』と書かれていた。
確かに的井先生。
へええ、祐助っていうんだ。
先生が準備のために背中を向けたのをいいことに、後ろ姿を値踏みした。
さっきは緊張してしまって、顔をよく見れなかったけど、後ろ姿は完璧だ。
髪の長さもいい感じだし、肩のラインがしっかりしていて男らしい。
白衣の下から伸びる足もすっきりしているし、履いている靴も彼に馴染んでいる。
「じゃあ、ちょっと顎の調子見てみましょうね」
じろじろ眺めまわしていると、素敵ボイスでわたしの耳をとろかしながら先生が振り返った。