恋の扉をこじあけろ
「この前はえっと、ありがとうございました。知らない間に家まで運んでもらったみたいで…」
先生は何のことか思い当ったらしく、ああ、といいながらわたしの診察表を台の上に置いて少し悲しげな顔をした。
「途中で寝られて、傷ついたよ」
「えっ!?と、途中?」
狼狽えると、先生は笑いながらわたしの頭を撫でた。
「からかうなんてひどいです」
こども扱いまでして。
むくれながらも、わたしはなんだか楽しかった。
嬉しいのと、恥ずかしいのとで体がふわふわしているみたいな錯覚に陥る。
幸せ。
さっきまでいろいろと悩んでいたのが嘘のように、わたしは先生と笑い合っていた。
「そろそろ診察しないと、勘ぐられるな」
そっと、わたしにエプロンをかけてくれる。
ついでに、するりと指で首筋をなぞった。
いつも以上に肩を揺らしたわたしに、先生が背後から顔を近づけてきた。