恋の扉をこじあけろ
そっと耳にキスを落とされる。


わたしはゾクリとして身を捩じらせた。


「や…」


隣のブースから、話し声が聞こえる。


忙しなく歩き回る足音も。


ここは一番隅で、隣から覗き込まれない限り見えないけど、この間の松居先生のようにいつ誰かがやってきてもおかしくない。


だけどそれ以上に、先生にキスをされるのがうれしい。


もっとしてほしい。



もっと。



誰かに見られるかもしれないという恐怖感が、わたしの欲望を高めているのかもしれない。


先生は最後にわたしの唇にキスを落として、そっと離れた。


柔らかな微笑みを浮かべる先生を、名残惜しく見上げた。



先生が離れてしまったのが、とてもさみしかった。


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