恋の扉をこじあけろ

冬実は嬉しそうな表情になり、スプーンを手にとった。


冬実が嬉しそうな顔をしているのを見るのは悪くない。

わたしがそうさせたと思うとなんだかくすぐったくて、さくらんぼを口に含んだ。


甘酸っぱい。


「それで、的井先生とはどうなったの?」


「えっ?」


ぎくりとして、さくらんぼが口から飛び出しそうになった。


だって、いきなり聞いてくるから。


「どうって…?」


「ははーん、さては何かあったな。それもいやらしいことだ」


顎に人差し指と親指を押し当てて、そんな推察をしてくるからいやだ。


しかもそれがはずれだとは言えないから。


この前のことを思い出したせいで赤くなってしまい、冬実に答えを悟られてしまった。


赤くなるわたしを見て、冬実はふっと柔らかな表情を浮かべた。


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